理化学研究所の特許「中性子によるコンクリート内塩分濃度の非破壊検査装置の発明(特許第7489094号)」が、公益社団法人発明協会「令和8年度全国発明表彰」の「未来創造発明奨励賞」を受賞することが決定しました。
全国発明表彰は、日本国内における科学技術の振興、産業経済の発展に大きく貢献している発明等に関し、功績のあった者を顕彰するものです。
未来創造発明奨励賞は、科学技術的に秀でた進歩性を有し、かつ、中小・ベンチャー企業、大学及び公設試験研究機関等の研究機関に係る発明等が対象となり、特に優秀と認められる発明等に贈呈されます。
また、本受賞に伴い未来創造発明貢献賞が、五神 真 理事長に贈られます。未来創造発明貢献賞は、未来創造発明賞もしくは未来創造発明奨励賞を受賞する発明等が法人におけるものである場合に、当該法人の代表者に贈呈されます。
表彰式は6月15日に執り行われる予定です。
未来創造発明奨励賞 受賞者(発明者)
若林 泰生 研究員
大竹 淑恵 副チームディレクター
池田 裕二郎 客員主管研究員
受賞発明概要
「中性子によるコンクリート内塩分濃度の非破壊検査装置の発明」(特許第7489094号)
本発明は、中性子を対象物に照射し、内在する元素との反応で生じる即発ガンマ線を計測し、元素の定量手法である中性子誘導即発ガンマ線分析[1]を用い、コンクリート橋の塩害[2]点検に必要な深さ方向の塩分濃度分布を計測(例:表面から3㎝×3深度の9㎝深さまで)して、鋼材を腐食させ始める塩分濃度1.2kg/m3より低い1.0kg/m3を検知することで予防保全を可能とし、構造物を傷つけず完全な非破壊計測を可能とする手法と装置である。
本発明により、橋梁からコンクリートコアなど試料採取の必要がある既存技術の微破壊法ではこれまで難しかった同一箇所の経年調査、複数箇所検査による橋梁全体の塩害進行把握など、重要な箇所の検査が可能となり、落橋防止、長寿命化実現、維持修繕費削減のための予防保全的メンテナンスへの転換に貢献できる。本発明は既に北海道から沖縄まで国内の塩害点検に活用されており、世界での活用も期待される。
受賞者(発明者)3名のコメント
世界的に頻発している落橋事故の三大要因の一つは"塩害"です。本発明は、外から見えない橋梁内部に含まれる"塩分"を、完全非破壊で計測・評価できるようにするための技術です。
本発明を用いた超小型の非破壊検査装置「中性子塩分計RANS-μ(ランズ-マイクロ)」は、中性子誘導即発ガンマ線分析法を利用しています。2025年度末までに1都1道24県の143橋279ヶ所で計測を実施しました。
今回の受賞を踏まえ、さらなる技術展開、より広く社会の役に立つ中性子利用・発展を目指してまいります。
関連リンク
補足説明
- 1.中性子誘導即発ガンマ(γ)線分析法
中性子照射試料中の特定の原子核と中性子が反応すると、複数の特有のエネルギーを持ったγ線(即発γ線)が、特有の量(γ線強度)で放出される。その即発γ線を検出し、そのエネルギーおよび強度から、試料中に存在する元素の同定と定量を行う分析手法。基本的に非破壊で試料の再利用が可能なため、考古学上の貴重なサンプルや、隕石などの微量分析などに使われている。 - 2.塩害
インフラコンクリート構造物の劣化要因の一つ。沿岸や山間部の橋梁などのコンクリート構造物において、海水や凍結防止剤に含まれる塩分の浸透で鉄筋が腐食することで、膨張によるコンクリートのひび割れ・剥落、鉄筋断面積の減少による破断などが起こり、落橋などの重大な事故につながる。ひび割れなど塩害の症状が構造物表面に現れる頃にはかなり劣化が進行しているため、早めの劣化診断が重要である。
