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RIKEN People 2026年6月8日

研究を支える仕事――対話を重ね、最適な空間を追求

研究で取り扱う危険物や、生態系への影響に配慮が必要な生物を厳重に管理する。人間が感じることができない、ごくわずかな振動すら許されない研究環境を整え、維持する。最先端の研究を行う上では、厳しい制約はつきものです。理研の敷地内にある施設の新築を担う施設部施設整備課の佐藤 凱 主査は、研究者にとって最適な研究環境づくりのため、日ごろから現場に足しげく通い、研究者や利用者との対話を大事にしています。

佐藤 凱の写真

佐藤 凱(サトウ・ガイ)

施設部 施設整備課 主査

「挑戦するなら今」と理研へ

家づくりに憧れて大学で建築を学んだ佐藤 主査。ハウスメーカーに就職後、木造住宅設計の経験を4年間積んだ。働きながら1級建築士の資格を取得したことを機に、「より専門性を生かしながら建築に関わりたい」と考えるようになった。そんなときに目にしたのが理研で建築を担当する求人広告。学生時代、宇宙に興味があって科学雑誌をよく読んでいたこともあり、科学に親しみもあった。「挑戦するなら今だ」と思い、2021年、理研に飛び込んだ。

要望は「ハエを逃がすな」

当初は戸惑いの連続だった。同じ建築でも、住宅と研究施設ではまるで勝手が違うからだ。図面を読み込み、先輩に教えてもらいながら、少しずつ知識を身に付けていった。

そうした中、担当したのがショウジョウバエを取り扱う研究室の改修だった。「虫かごの中で飼育するのかな」。そんなふうに気楽に構えて研究者と打ち合わせをしたところ、こう告げられた。「遺伝子操作したハエが外に逃げ出さない研究室をつくる必要がある」

それを聞いて緊張感を覚えた。

一般に使われるドアには床との間に2ミリほどの隙間がある。ハエの大きさも2ミリ程度のため、外に逃げ出してしまう恐れがあった。そこで佐藤 主査らのチームは、隙間なく密閉できるドアを設置。さらに、空気が外に流れ出ないよう部屋の中の気圧を低い状態に保つ構造にするなど、ハエが外に逃げ出さない工夫を凝らした。研究室を手がけることの責任の重さを感じた。

実際には工事担当者がまとめた仕様書を基に、外注業者が図面を引いて施工する。だが、「どのような施設にしたいか高い精度で仕様書に文言として落とし込むことが重要。まずは研究者や利用者から細かく聞き取りをして、自分でも実際に図面を引いてイメージしてみることもあります」と佐藤 主査は言う。

播磨へ50回近く通い、築いた信頼

その後も現場との対話に力を入れた。

大型放射光施設「SPring-8(スプリングエイト)」のある播磨地区でのプロジェクトが始まり、後継となる「SPring-8-Ⅱ」を組み立てるための付属施設を担当した。理研 和光地区(埼玉県)から播磨地区(兵庫県)まで片道約6時間かけ、3年間で計50回近く通った。現役の「SPring-8」が稼働する実験中は、人が感じないほどのかすかな振動すら許されない。そんな中、振動の原因となる工事を行うには、現地の施設課と協力しながら研究者の実験スケジュールを細かく調整する必要があった。施設は2026年3月、無事に完成した。

「プロジェクトを引っ張る立場として、研究者や現地管理部門に加えて設計者や工事業者の信頼も得ないといけない。最初はメールでやりとりしていましたが、やはり会って話すことが大事でした。遠くて大変でしたけどね」と振り返る。

良い建物で、良い研究を支える

「良い建物をつくり、良い研究ができる環境を整えるのが、われわれの目的」と佐藤 主査は言う。現在は、筑波地区の動物飼育施設のほか、和光地区の拡張工事に携わり、日本最高水準の研究環境づくりに挑んでいる。

多忙な日々だが、国内外への旅行が息抜きだ。最近行ったスペインでは、アントニ・ガウディの建築群を巡った。オンとオフをうまく切り替えながら、最先端の研究を縁の下で支えている。

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