2025年7月12日、理化学研究所(理研)は「量子科学誕生100年記念シンポジウム『「量子」ってなに!? 』」を東京JPタワー ホール & カンファレンス にて開催しました。当日は小学生を含む幅広い年代から500人を超える方々にご来場いただきました。
会場の様子
シンポジウムは数学コミュニケーターの篠崎 菜穂子さんと木村 真明 室長(理研 仁科加速器科学研究センター 核子多体論研究室)の司会で進行しました。はじめに理研の五神 真 理事長が、開催の趣旨説明と学生時代の「量子」の思い出に触れて挨拶しました。次に、ノーベル物理学賞受賞者である仁科記念財団の小林 誠 顧問 が、日本の量子力学の先駆けであり、理研で主任研究員として研究室を主宰し、後に第4代所長となった仁科 芳雄 博士(1890~1951年)を紹介しました。
第1部では、「量子の発見」をテーマに、野村 泰紀 上級研究員(理研 数理創造研究センター/カリフォルニア大学バークレー校 教授)が、人類が「量子」を認識することなる気付きから今日の科学者達が辿り着いた最先端の「量子って何?」を分かりやすく説明。次に伊藤 憲二 教授(京都大学大学院)が、100年前に欧州に渡り量子力学研究に取り組んだ仁科 芳雄 博士が、帰国後に主に理研で量子力学研究の発展のためのインフラを構築した業績を紹介しました。
第2部「私たちの周りには「量子」がいっぱい」では、現代社会で使われている身近な「量子」を取り上げました。まず、畑中 美穂 教授 (慶應義塾大学/分子科学研究所)が、量子科学が原子や分子の振る舞いを決める“見えないルール”であると説明しました。次に、川上 則雄 副プログラムディレクター (理研 最先端研究プラットフォーム連携(TRIP)事業本部 基礎量子科学研究プログラム)が、「量子」の集団としての振る舞い「多粒子の量子現象」を説明し、これが固体においては金属、半導体、磁性、超伝導の性質を与え、スマートフォンの中にも量子が満載であると紹介しました。続いて、岡田 康志 副センター長(理研 生命機能科学研究センター)が、生物が「量子」の効果を使っている可能性を示す最新の研究例を紹介し、今後の量子生物学への期待を語りました。
第3部「これからの量子」では、萩野 浩一 客員研究員(理研 仁科加速器科学研究センター/京都大学大学院 教授)が「量子トンネル現象」を紹介し、太陽が熱すぎない状態で長く輝き続けている理由を説明しました。竹内 繁樹 教授(京都大学大学院)は、光子の「量子もつれ」や「量子干渉」などの不思議な性質を説明し、「大阪・関西万博」での実演を紹介しました。最後に、中村 泰信 センター長(理研 量子コンピュータ研究センター)が「量子の重ね合わせ」という原理を情報処理に使って計算する量子コンピュータの最新状況を紹介し、21世紀は量子情報の時代になるとの期待を語りました。
会場では参加者がメモを取りながら熱心に講演を聞く姿も見られました。質疑応答の時間では、小林 顧問へ「ピンチになったとき、どうやって解決しましたか?」との質問が寄せられ、「心がけているのは、問題を一番基礎から考え直すこと」とアドバイスしました。「トンネル効果は知っていたけれど、仕組みについては分からなかったので教えて下さい」との質問には、萩野 客員研究員が「粒子は勢いが足りないと壁で弾き返されるけれど、波の性質もあるため通り抜けることができる」と回答しました。シンポジウムは盛況のうちに終了しましたが、終了後も子どもたちが講師たちに質問する姿が見受けられました。
参加者からの質問に回答する講師たち
関連リンク
- 特設サイト「理化学研究所「量子科学誕生100年記念シンポジウム「量子」ってなに!?」|仁科加速器科学研究センター」
 - 2025年7月12日シンポジウム「理化学研究所「量子科学誕生100年記念シンポジウム「量子」ってなに!?」
 
