理化学研究所(理研)最先端研究プラットフォーム連携(TRIP)事業本部 科学研究基盤モデル開発プログラム(AGIS)は、2025年11月から12月にかけて「JAPAN SCIENTIST AI JAM SESSION 2025」を開催しました。このイベントは、科学のさまざまな分野における「難問」に最先端AIモデルをどのように活用できるかを試行するため、Amazon Web Services(AWS)、Anthropic、Google Cloud注1)、Nvidia、OpenAIの協力により実施しました。
このイベントの着想のきっかけは、2025年2月に米国で開催された“1,000 Scientist AI Jam Session” 注2)です。米国のイベントでは、アルゴンヌ国立研究所をはじめ、エネルギー省傘下の研究機関が、科学的課題にAIモデルをどのように活用できるかを試行しました。このように、AIを科学研究に活用し、科学を発展させようとする試み“AI for Science”が国際的に加速しています。
AGISは、科学研究向けの基盤モデル(汎用性の高いAIモデル)の開発によって、科学研究のスピードや探索範囲を向上することを目指しています。目標の達成のためには、研究者自身によるAI開発に加えて、AI開発の最先端を走る企業と協力し、生成AIやAIエージェントを活用していくことが重要です。そこで、日本の科学者に向けて、科学研究にAIを活用するきっかけを提供するために、各社の協力を得て「JAPAN SCIENTIST AI JAM SESSION 2025」を開催しました。
まず、11月11日にオンラインチュートリアルを行いました。ここでは、協力企業各社がそれぞれのモデルの特徴や活用事例を紹介しました。11月28日には、理研の東京連絡事務所および計算科学研究センター(R-CCS、神戸地区)でドライランを行いました。ドライランとは予行演習を意味し、情報科学分野では、実際の通信環境などを再現した状態でリハーサルを行うことを指します。今回も、12月の本番セッションに向けて、少人数でAIモデルを操作するリハーサルを行いました。
そして、12月16日にはAP日本橋(東京都)に124名、18日には神戸地区のR-CCSに95名の参加者が集まり、AIモデルを使って科学的課題に挑戦しました。
会場の様子
16日の冒頭では、文部科学省研究振興局の淵上 孝 局長からご挨拶をいただきました。淵上局長は、今回のイベントでアカデミアと企業の接点が生まれ、国内のAI for Scienceがさらに加速し、画期的なイノベーションにつながることを期待すると述べられました。
文部科学省研究振興局 淵上 孝 局長の挨拶の様子
また、安野 貴博 参議院議員が視察に訪れ、AIモデルの開発状況や、科学研究におけるAI活用の必要性について参加者と議論を交わしました。

安野 貴博 参議院議員の視察の様子
参加者は、実際に各社のAIモデルを使用しながら、研究上の課題解決に取り組みました。例えば、理研 光量子工学研究センターの谷 峻太郎 理研ECL研究チームリーダーは、企業・大学・国の研究所からの参加者による即席のチームで、論文の図から自然現象を説明する物理モデルの自動構築ができるかに挑戦しました。複雑なグラフから定量的なデータを抽出したり、物理的に妥当なモデルを構築したりすることは、最新のAIモデルを使っても未だ困難な課題です。各社の最先端のAIモデルを制限なく使える環境で、AI開発企業の技術者とも相談しながらチーム内で活発に議論を繰り広げ、複雑なグラフからデータ点を高精度で抽出することに成功しました。さらに、シミュレーションのためのモデル提案もある程度妥当に行えることが分かりました。データ抽出の正確性や提案の妥当性には人間のチェックが必要ですが、科学研究を支えるツールとして、現状のAIモデルで何がどこまでできるのかの限界を探る貴重な機会となりました。
科学者とAIのやりとりは、AI企業の今後の開発にとって貴重なデータとなります。また科学者にとっても、人間の認識・計算範囲を大きく拡張してくれるツールとして、AIは頼もしいパートナーになり得ます。今回のイベントでは、科学者と企業の双方が良いフィードバックを得ることができました。今後もAI活用によって科学的探究の幅がさらに広がっていくよう、研究活動やイベントを通じて貢献していきたいと思います。
- 注1)Google CloudはGoogle LLCの登録商標です。
- 注2)1,000 Scientist AI Jam Sessionのウェブサイト(英語)
関連リンク
- 2025年11月11日、11月28日、12月16日、12月18日「JAPAN SCIENTIST AI JAM SESSION 2025」
