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RIKEN People 2026年2月24日

信号処理とデータ収集・解析で金字塔研究に貢献

「魔法数」という言葉をご存じでしょうか。陽子や中性子がそれぞれある決まった数をとると、原子核の構造が格段に安定します。この数字を魔法数と呼び、2、8、20、28、50などが知られています。陽子と中性子がともに魔法数のとき、原子核は特に高い安定性を示します。これを「二重魔法性」と言います。しかし、陽子より中性子が多い原子核では魔法数の性質が消失すると考えられていて、陽子28個、中性子50個のニッケルで二重魔法性が成立するかどうかを実験で示すことは、原子核物理学における長年の課題でした。馬場 秀忠 チームリーダーは、その証明に欠かせない実験装置の部品設計、組み立てから、データの収集・解析システムの研究開発までを担う「縁の下の力持ち」として研究を支え、直接的な証拠を発見しました。成果は2019年5月の科学雑誌『Nature』に掲載され、5カ国、総勢71人に及ぶ大規模研究チームの一人として名を連ねました。

馬場 秀忠の写真

馬場 秀忠(ババ・ヒデタダ)

仁科加速器科学研究センター RIビーム基盤開発部 情報処理技術チーム チームリーダー

自ら開発したシステムを膨大な配線で接続して実験データを収集している。

同じ目線で真摯に向き合う

大学院終了後の2005年、仁科加速器科学研究センター(RNC)で基礎科学特別研究員として理研での研究をスタートした馬場 チームリーダー。2年後、放射性同位元素(RI)を使って原子核の性質を追究するための加速器施設「RIビームファクトリー(RIBF)」が本格稼働した。RIBFは従来の施設より性能が約100倍向上、ウランまでの全元素のRIをつくれるようになった。これにより「新元素を発見したい」「宇宙で使用可能な半導体を開発したい」「がんの治療に生かしたい」など、研究者たちの期待が膨らむ一方、得られる実験データ量が激増した。以来ずっと、データを収集し処理するシステムの開発や整備、運用に携わってきた。

「一つの実験を行う期間は1週間程度ですが、その準備段階であるシステムの開発には数か月から数年かかります」。関わる分野が幅広いことに加え、欧米アジア各国との国際共同研究も多く、中長期的に理研内外の研究者と打ち合わせる機会も増えた。

「大切にしているのは、誰とでも同じ目線で真摯に向き合い、『実験が回り、成果が得られる』ようにすることです」。それは、わが国最初のサイクロトロン(荷電粒子の円形加速器)を建設し、日本の原子核物理学の父と呼ばれる仁科 芳雄 博士の姿にも通じる。若き仁科 博士がデンマークの首都、コペンハーゲンのニールス・ボーア 博士(1922年ノーベル物理学賞受賞)の元に留学し、持ち帰ったのが、自由で闊達な、そしてユーモアに富んだ討論と対話によって現代物理学誕生の下地となった「コペンハーゲン精神」だった。

目指すは利便性の高いシステム

設計やシステム開発の面白さを知ったのは、立教大学4年生のときにさかのぼる。幼少期はおもちゃを分解し内部の構造を調べて楽しみ、中学、高校では数学と理科が得意だったので大学は物理学科に進学した。ところが、量子や宇宙物理などの講義を聴いてもまったく心に響かず、「最も物理学から遠いテーマ」という理由で、原子核物理の研究室で提案されていたデータ収集システム開発という卒業研究に飛びついた。そこで初めて心が躍り始めた。装置が自分のつくったプログラムに従って動くことで、「装置を完全に手なずけたような気持ちになりました。自分のやりたいことは、これだと気付いたのです」と振り返る。

今後の目標は、RNCに年間100テラバイト近くも蓄積されるデータの有効活用だ。例えば、冒頭で触れたニッケルの二重魔法性を解明した論文で解析に使用したのは、実験データのごくわずかで、残された大部分のデータにも宝が眠っている。「先駆的なシステム開発から次代の実験手法を提案するとともに、情報処理能力をさらに高め原子核研究の新たな境地を切り拓きたい」と意気込む。

チームワークで新発見目指す

週末は、高校時代から続ける木管楽器のファゴットを携え、アマチュアオーケストラに参加する。最近はソフトボールの監督も引き受け、慌ただしく過ごす。野球の経験すらなかったが、仲間を大切にする姿に、友人からの信頼が寄せられた結果だ。

「オーケストラも監督も、研究と同様にチームワークが大切です。多くの優秀な同僚たちと一緒に、ビジョンを持って、わくわくする新しい現象を発見したいと思います」

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