最先端のサイエンスを、親しみやすいかたちで人々に伝えるアウトリーチ活動。その活動に集中するため、河野 弘幸 主事は2023年春、研究職から事務職に身を転じました。研究所内外の体験授業などで講師を務め、深い知識と科学を楽しむ気持ちを携え、全力投球でアウトリーチ活動に挑みます。
河野 弘幸(カワノ・ヒロユキ)
安全・地区統括本部 和光事業部 地区統括・調整課 / 広報部 主事
「好き」を追いかけ、研究者に
陸上競技で実業団入りを夢見た少年時代を経て、高校で現在の「学士(工学)」に当たる「工学士」という響きにひかれて理系に進んだ。学生時代はレーザー分析化学を学び、そのための光源である高出力多波長超短パルスレーザーの開発を専門にした。
装置開発も手がけた。「世界唯一の装置をつくれば、世界唯一のデータが出る」。科学の面白さに胸を躍らせた。中学校の体育教師だった父の背を見て育ち、大学教員の道を志すようになった。
博士課程修了後、日本学術振興会の海外特別研究員としてドイツ・ハノーファー大学に赴任したことを機に、「研究所の研究者」が目標になった。「好きなことしかやってこなかったんです」
世代を超えて議論、充実した23年間
帰国後、理研に基礎科学特別研究員として着任してからは、若手の指導にも携わった。理研は連携大学院制度が充実し、研究所内で学ぶ学生も少なくない。「自由に研究させてもらい、世代を超えた議論もでき、研究者として過ごした23年間はとても充実していました」
だが「自分の研究は世の役に立っているだろうか」と自問したこともあった。そのような時でも、訪問客への研究に関する説明や所外での講演活動などでは確かな手応えが感じられた。
輝く瞳に背中を押されて
50代、何度目かの転機がやってきた。研究職から事務職へのキャリアチェンジの話が持ち上がったのだ。そんな折、2022年7月に高校生らを対象に理研が実施した「RIKEN和光サイエンス合宿」で高校生に指導する機会を得た。
テーマは「身近にいる微生物たちが棲む超高速の世界」。「微生物ってすごいんです。単細胞で生命を維持し、多細胞生物の器官のような機能も備えています。その驚きを伝えたかった」と当時を振り返る。
実験では微生物のべん毛が1秒間に約50回のビートを刻む様子をレーザー顕微鏡で観察した。その様子を目の当たりにした瞬間、高校生は目を輝かせ、歓声を上げた。「こうやって自然科学の道に進む子をどんどん増やすことができたら」。そんな思いが胸にこみ上げ、河野 主事は翌年春、キャリアチェンジに踏み切った。
転身から約3年半、「事務職はチームプレー。仲間に支えてもらい、理研への愛着が一層深まりました」。2025年度に文部科学省が創設した科学技術教育アドバイザーにも任命され、今年度もその任に就いている。「アウトリーチ活動を通して、若者たちに科学者の種をまいているんです。世の役に立っているなあって実感できますね。究極的には、全員を理研ファンにしたいんです」
理研 和光地区(埼玉県和光市)での団体見学対応。近隣小学校の児童たちを前に、第4号サイクロトロン(後ろの巨大な遺構)について解説する河野 主事。
科学技術教育アドバイザーとして、所外のイベントにも意欲的に出動する。
関連リンク
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