2026年9月4日
理化学研究所
「SPring-8-II」に水素エネルギー分野専用ビームライン「BL34XU」を建設
-京大・NEDOによるプロジェクト始動、データ科学で材料開発を加速-
理化学研究所(理研)は、大型放射光施設「SPring-8(スプリングエイト)」[1]の大幅な性能向上を目指し、「SPring-8-II[2]」の整備を主導しており、2029年度の共用開始を目指しています。
SPring-8-IIでは、放射光の輝度がSPring-8のおよそ100倍に向上し、従来は年単位の時間を要すると見込まれていた計測が数日で完了するようになります。これにより、高精細のデータを大量に取得することが可能になります。この能力を最先端のAIのほか、「富岳NEXT[3]」などと融合させることで、日本の研究開発プロセスそのものを次世代型へと革新します。
この度、京都大学(京大)と国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は共同で、SPring-8-IIに水素エネルギー分野に特化した専用ビームライン[4]「BL34XU」を建設するプロジェクトを始動しました。その記者会見注)が2026年8月20日、京大で開催され、理研から矢橋 牧名 グループディレクター(放射光科学研究センター 利用技術・システム開発研究部門 物理・化学系ビームライン基盤グループ)が登壇しました。
矢橋 グループディレクターから、BL34XUが国の戦略課題に迅速に応えるSPring-8-IIのフラッグシップモデルとして、我が国の水素エネルギー分野の研究開発を強力に牽引することへの高い期待が示されました。
- 注)京都大学ウェブサイト「水素エネルギー分野の研究開発を加速する世界初のマルチモーダル専用ビームライン(SPring-8-II/BL34XU)建設プロジェクトを始動します」(2026年08月25日)
矢橋 グループディレクター
BL34XUの概要
BL34XUは、SPring-8から SPring-8-IIへのアップグレードに合わせて建設が予定されている、水素エネルギー分野に特化した専用ビームラインです。燃料電池・水電解装置に使われる材料やデバイスを対象に、BL34XUに設置する性質の異なる複数の最先端計測技術を組み合わせることで、実際に動作させたまま内部変化の観察が可能となります。いわば材料やデバイスの「総合精密検査(人間ドック)」を実施するものです。これまで別々の装置で独立に調べていた原子の並び、元素の分布、化学状態などの情報を、同じ試料、同じ動作条件の下で一括して取得し解析します。これにより、燃料電池や水電解装置の内部で「いつ、どこで、何が起きているのか」を、動作させたまま総合的に捉えることが可能となります。
「BL」はビームラインの略称、「34」はビームラインを識別する番号、「XU」はX線アンジュレータ(X-ray Undulator)を光源とするビームラインであることを示しています。
関連リンク
- 京都大学 成長戦略本部ウェブサイト「水素エネルギー分野の研究開発を加速する世界初のマルチモーダル専用ビームライン(SPring-8-II/BL34XU)建設プロジェクトが始動」
- 2025年11月28日クローズアップRIKEN「SPring-8-Ⅱが変える科学」
- 2024年10月24日プレスリリース「SPring-8光源大改修の設計指針を公表」
補足説明
- 1.大型放射光施設「SPring-8(スプリングエイト)」
理研が所有する、兵庫県の播磨科学公園都市にある世界でもトップクラスの放射光を生み出す大型放射光施設。利用支援などは高輝度光科学研究センター(JASRI)が行っている。SPring-8の名称は、Super Photon ring-8 GeVに由来。放射光を利用して、ナノテクノロジー、生命科学から医療まで、幅広い分野の研究が行われている。 - 2.SPring-8-II
理研が主体となって整備を実施している、SPring-8の大幅な性能向上を目指した次期計画の名称。 - 3.富岳NEXT
理研、富士通株式会社、NVIDIA Corporationが2030年頃の稼働を目指して開発している、スーパーコンピュータ「富岳」の次世代となる新たなフラッグシップシステム。 - 4.専用ビームライン
ビームラインとは、加速器から発生した放射光を取り出し、波長や大きさなどを整えて試料に照射し、実験・測定を行うための一連の施設のこと。専用ビームラインとは、大学や企業などで理研以外の外部機関が設置し、原則として設置者が自ら利用するビームライン。
