理化学研究所 計算科学研究センター(R-CCS)は、シンガポール国立量子計算ハブ(National Quantum Computing Hub: NQCH)を構成する高性能計算機機構(Institute of High Performance Computing:IHPC)、シンガポール国立スーパーコンピュータセンター(National Supercomputing Centre Singapore:NSCC)、シンガポール国立大学(National University of Singapore:NUS)と、SCA/HPCAsia 2026と同時開催された「第8回R-CCS国際シンポジウム」の開会式典において、量子HPC連携プラットフォームの評価や量子HPC連携アプリケーションに向けた技術的情報の共有を目的とした協力覚書(MoU)を締結しました。今回のMoU取り交わしにより、4つの組織は量子HPCハイブリッドプラットフォームに関する知見とデータの交換を促進します。
覚書における連携・協力内容
- 量子HPCハイブリッドプラットフォームの開発・評価、ミドルウェア・システムソフトウェアの開発、ワークフロー管理ツールの整備、スーパーコンピュータ「富岳」および各国の量子計算資源を活用した実証実験
- 量子HPCアプリケーションの共同研究(量子化学、線形代数、流体力学、物流・最適化、脱炭素関連応用などの分野
量子コンピュータは、化学計算、材料科学、最適化、流体解析など、従来の高性能計算(HPC)では困難な計算領域で大きな可能性を持ちます。一方、量子計算単体ではまだ規模や精度に限界があるため、HPCと量子計算を統合した「ハイブリッド計算」が世界的に注目されています。
現在、R-CCSではNEDOの支援によるJHPC-quantumプロジェクト注1)において、スーパーコンピュータ「富岳」と二つの特性の異なる商用の量子コンピュータを理研内にオンプレミス(所内運用)で導入し、量子HPCハイブリッドプラットフォームの開発を行っています。一方、NQCHは、量子コンピューティング向けのアプリケーションとミドルウェアを開発するためのシンガポールの国家イニシアチブです。ハイブリッドコンピューティングのミドルウェア、アルゴリズム、ソフトウェアツールの研究を推進するために2025年に開始されたハイブリッド量子-古典コンピューティング(HQCC 1.0)プログラムを推進しています。
量子とHPCの融合は、科学技術の未来を大きく変える可能性を秘めており、今回のMoU締結はその重要な一歩となります。
- 前列:左からNUSホセ・イグナシオ・ラトーレ 教授、NSCCテレンス・フン 最高経営責任者、IHPCスー・イー 事務局長、R-CCS松岡 聡 センター長
- 後列:左からHQCHリン・ケオク・トン エグゼクティブディレクター、NSCC クエック・ギム・ピュー 運営委員会委員長、A*STARリム・ケン・フイ 科学技術研究会議副最高経営責任者、R-CCS 佐藤 三久 量子HPC連携プラットフォーム部門長、R-CCS 児玉 祐悦 同副部門長、R-CCS 小野寺 民也 同副部門長
- 注1)NEDO(国立研究開発法人新エネルギー産業技術総合開発機構)の「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業(JPNP20017)」の委託事業「計算可能領域の開拓のための量子・スパコン連携プラットフォームの研究開発(研究代表者:佐藤 三久)」
関連リンク
- 2025年6月24日お知らせ「量子コンピュータIBM Quantum System Twoを神戸で本格稼働-同じ建物内のスーパーコンピュータ「富岳」と量子・HPC連携プラットフォームを実現-」
- 2025年10月14日お知らせ「JHPC-quantum、テストユーザプログラム始動-量子HPC連携アプリケーションの実用化を推進、21件を採択」
- 2026年2月13日お知らせ「「SCA/HPCAsia 2026」開催報告」
